第179回◆部分ストと賃金請求権◆

人事担当者です。
弊社のある工場でストライキが発生しました。
ただし、労働組合員全員参加のストではなくて、一部の組合員によって計画・実行されたものです。
困ったことに、スト不参加の組合員から、ストライキ中に出社したことを理由に賃金を請求されてしまいました。
果たして会社は労働者からの賃金請求に応じる必要があるのでしょうか?


<参考判例>
ノースウエスト航空事件、最判昭和62・7・17(民集41巻5号1283頁)

部分ストと賃金請求権 (上告棄却)
判旨抜粋
「企業ないし事業場の労働者の一部によるストライキが原因で、
ストライキに参加しなかった労働者が労働をすることが社会観念上不能または無価値となり、その労働義務を履行することができなくなった場合、不参加労働者が賃金請求権を有するか否かについては、当該労働者が就労の意思を有する以上、その個別の労働契約上の危険負担(民法536条2項)の問題として考察すべきである」。
そして、ストライキが使用者の制御できないものであることを考慮すると、
「使用者が不当労働行為の意思その他不当な目的をもってことさらストライキを行わせしめたなどの特別の事情がない限り、右ストライキは民法536条2項の『債権者の責に帰すべき事由』には当たらず」、ストライキ不参加労働者は賃金請求権を失うと解するのが相当である。

<結論>

以上の判例から、
ストライキは使用者(債権者)の責めに帰すべき事由とは言えないため、労働者は賃金の請求ができないことになります。
よって、使用者に賃金支払の義務はないと読み解くことができます。


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※本文章は、2019年3月に寄稿しています。