令和2年4月から始まった社会保険・労働保険の電子申請義務化(社会保険・労働保険の電子申請義務化の対応方法)。
令和2年11月には、e-Govの大幅なリニューアルや健康保険組合向けにも電子申請義務化が開始となる等、電子申請について大きな動きがありました。
この記事では、毎月10,000件以上の電子申請を行う社会保険労務士の小林労務が、そもそもe-Govとは何かから、リニューアルに至った背景を解説します。
目次
- e-Govとは
- 旧e-Govでの課題
- 新e-Gov(リニューアルしたe-Gov)のメリット・デメリット
1.e-Govとは
e-Govとは、「電子政府の総合窓口」の通称であり、総務省が運営する総合的な行政ポータルサイトの事を指します。主に、以下の目的で設置されました。
①各府省がインターネットを通じて行政情報の総合的な検索・案内サービス提供する
②24時間365日いつでも申請・届け出を可能とする
これらの背景には、「規制改革実施計画」(平成29年6月9日閣議決定)において、規制改革、行政手続きの簡素化、IT化の一体的推進の観点から行政手続きコストを2020年までに20%削減する、というねらいがありました。
そのための行政手続き簡素化の3原則として、
- 行政手続の電子化の徹底(デジタルファースト)
- 同じ情報は一度だけの原則(ワンスオンリー)
- 複数手続き等が1か所で実現(コネクテッド・ワンストップ)
が謳われ、具体的な取り組みが推進されました。具体的な例としては、大法人(資本金1億円超)への電子申請の義務化や従業員本人の押印・署名の省略等が、実施されています。
その結果、平成25年度には6.9%だった電子申請の利用率は、令和2年度には39.1%と大きく伸びており、電子申請が普及されている傾向が伺えます。
出典:内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室「デジタル手続法案の概要について」
2.旧e-Govでの課題
利用率が高まりつつあるe-Govですが、サービス開始当初からいくつかの課題があり、利用者にとって使いづらい点がありました。
その理由の1つは、複雑な操作画面。紙申請のイメージ上にそのまま入力を行うのですが、とにかく入力個所が多く、位置も複雑に感じられました。
2つ目に、操作性の制限。電子申請の場合、これまで紙の届出に必要だった事業主印の代わりに「電子証明書」が必要となります。これは、会社や組織の代表者の「実印」にあたるもので、電子申請を行う際にシステムへ取り込む必要があります。以前のe-Govでは、これらの電子証明書を申請の都度選択し、取り込む操作が必要であり、また一定時間内に入力を完了しなければならない制限等があり、片手間では作業ができない様な設計となっていました。
最後に、公文書取得の不便性。システムへの入室は任意のIDを入力し、ログインを行っていました。提出済みの申請・届出に関する状況確認を行う場合、到達番号とIDとが自動で対応付けされていないため、都度申請履歴の状況照会が必要となり、検索をする場合にも問合せ番号を記録しておかなければならず、複数の電子申請をする場合には不便なところがありました。
こうした課題を解決するため、e-Govでは更なる電子申請の普及を目指し、都度改善を行いつつ、e-Gov電子申請システムに備える機能を外部のソフトウェアから呼び出し、利用するための機能「外部連携APIシステム」によって、e-Govサイトを管理する総務省のサーバーと、企業が使用する人事労務ソフトから直接、電子申請を行う仕組みを整備しました。
電子申請APIに対応した市販の電子申請ソフトウェアの登場で、伸び悩んでいた利用者の普及率が少しずつ上向きとなり、電子申請のハードルを下げることに大きく貢献したと考えられます。
3.新e-Gov(リニューアルしたe-Gov)のメリット・デメリット
令和2年11月に、これまでの「電子政府の総合窓口(e-Gov)」は、「e-Gov」として大幅なリニューアルが実行されました。
具体的には、e-Gov 全体に関するデザインの刷新、それまでブラウザ上のみのアクセスからアプリケーション型への変更、ログイン機能を用いたマイページの導入、当該アカウントによる直近の電子申請利用内容に基づいた基本情報の記憶等、様々な機能がリニューアルされました。
旧e-Govと比べれば、見やすさや使いやすさは大きく改善されたかと思います。しかし、その中でも、ネガティブなニュースもあります。
新e-Govがスタートした令和2年11月24日以降、不明なシステムエラーや顧客情報の流出等延べ18件(令和3年2月現在)ほどの不具合が発生しています。走り始めたばかりのサービスのため、順次改善されていくかと思いますが、従業員の重要な個人情報を取り扱う社会保険において、操作性や利便性のみならず、セキュリティやデータ管理の点からも、電子申請ソフトウェアが果たす役割はまだまだ大きいでしょう。
そして、電子申請ソフトウェアの役割としてもう1点取り上げたいのが、令和2年11月より開始された、健康保険組合への電子申請についてです。e-Govでは、リニューアル後も健康保険組合への電子申請に対応をしておらず、電子申請を行うためには「マイナポータル経由での電子申請が可能なソフトウェア」が必要となります。小林労務が提供している電子申請特化型システム「e-asy電子申請.com®」では、令和3年4月より健康保険組合へのマイナポータル経由での電子申請対応が可能となります。
出典:厚生労働省 「2020年11月電子申請がスタートします」
政府としては、今後大企業のみならず、その他の企業へ対しても電子申請の導入をさらに加速させていく方針です。不要不急の外出自粛の影響によるテレワーク導入にも対応できる電子申請ソフトウェアは、これからの働き方に無くてはならない機能になると考えます。
各企業の人事労務ご担当者様は、この機会に「24時間365日いつでも申請・届け出を行うことができる電子申請システム」について、検討を進めるべきと言えるでしょう。
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